細胞の膜上には、“トランスポーター”と呼ばれる特殊な蛋白質が存在し、糖やビタミンといった栄養物をはじめとした様々な物質を細胞内に輸送して、生体の機能を調節しています。
トランスポーターは現在400種類以上報告されており、種類によって輸送する物質や発現部位が異なります。そのため、特定のトランスポーターを阻害することは、特定の物質の輸送だけを抑制することができ、生体機能を調節することで、様々な疾患の治療に役立つことが期待されます。
この様な作用を示す薬剤はトランスポーター阻害剤と呼ばれています。最近では、腎臓からの糖の再吸収に働くトランスポーターを阻害する薬剤が、尿中への糖の排泄を促進することで血糖値を低下させることが見出され、糖尿病の治療薬として脚光を浴びています。
特定の蛋白質(分子)を標的とした医薬品が、これまでに多々開発され臨床で使用されています。特に、酵素や受容体は研究開発の歴史が長く、既に多くの医薬品が使用されています。これらに比べ、トランスポーターを標的とした医薬品は非常に少ないのが現状です。そのため、トランスポーターを標的とした医薬品は、今後発展の余地が残っていると考えられます。そのため、薬のターゲットとして近年注目を浴びています。