寿製薬株式会社

虚血性大腸炎

1.虚血性大腸炎とは

大腸の血流障害により大腸粘膜に炎症や潰瘍が発症し、突然の腹痛と下痢・下血を来たす疾患です。この疾患は、血管側と腸管側それぞれの問題が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
血管側の問題として動脈硬化や血栓・塞栓などが挙げられ、高齢者や糖尿病・高脂血症などの動脈硬化や血流低下をきたす基礎疾患を持つ方に発症しやすいといわれています。また腸管側の問題としては、慢性便秘や浣腸などによる腸管内圧の上昇が挙げられます。好発部位は、図のように主に左側の大腸で脾彎曲部や下行結腸、S状結腸に好発します。

2.症状と診断

突然の腹痛と下痢,下血で発症します。症状の経過や発生部位(左側の大腸)と、その他の出血をきたす腸炎(感染性腸炎、抗生物質起因性腸炎、大腸憩室炎、潰瘍性大腸炎、クローン病など)や大腸癌を除外することで診断されますが、注腸造影や下部消化管内視鏡、病理組織にそれぞれ特徴的所見がみられるため診断は比較的容易です。また、その重症度から一過性型と狭窄型、そして壊死型の3型に分類されます。壊死型は重症であり、緊急手術の適応となりますが極めて稀です。

3.治療

基本的には入院治療であり、腸管の安静と全身状態を良好に保つための対症療法を行います。絶食のうえで輸液と抗生物質投与などの保存的治療により数日間経過を観察し、腹痛に対しては鎮痙薬を使用します。症状が軽快してくれば食事開始可能となります。一過性型では短期間のうちに完治しますが、狭窄型では狭窄解除のために手術が必要となることもあります。
基本的には良性の疾患ですが、約10%に再発はとされ、危険因子を多く有する例は再発率が高いと報告されています。