1.食道静脈瘤とは
食道の粘膜を流れる静脈が瘤(こぶ)のようにふくらんで曲がりくねってでこぼこになった状態をいいます。胃にもできることがあり、その場合は胃静脈瘤といいます。
2.原因
食道静脈瘤の原因の大部分は肝硬変ですが、アルコール性肝炎や特発性門脈圧亢進症、日本住血吸虫症などが原因となることもあります。肝硬変に伴い、肝臓に血液を送り込む門脈という血管の圧が高まると門脈圧亢進症という状態になります。すると静脈血の流れる方向が逆になり、食道の静脈に大量の血液が流れ込むために、血管が太くうねった状態となり、これを食道静脈瘤といいます。
3.症状
静脈瘤が大きくなっても、たべものが通りにくいなどの症状はあまりありません。病気がすすんで静脈瘤が大きくなると、破裂して大出血をおこすことがあります。突然に大量の吐血や下血がおこり、血圧が下がり治療が遅れるとショック状態に陥り死亡することがあります。ほとんどの患者さんは肝硬変を伴っているため、止血機能が低下していることが多いので、ひとたび出血がおきると止血しづらく、大量出血につながることもまれではありません。
4.診断
食道静脈瘤の診断には内視鏡検査と造影検査があります。しかし造影検査は静脈瘤の形がわかるだけですので、静脈瘤の色調や形態を詳しく観察できる内視鏡検査のほうがすぐれています。内視鏡検査で食道静脈瘤の形や色を観察することで、破裂しやすいかどうかがわかりますので、肝硬変や食道静脈瘤のある人は定期的に内視鏡検査を受けるようにしてください。
5.治療
食道静脈瘤の治療には様々な方法があり、その選択には、緊急時(出血時)か予防的かどうか、患者さんの肝機能を含めた全身状態などを考慮して決めます。また各施設の設備状況や得意とする手技などによっても治療方法が異なってきます。
a) 薬物療法
門脈圧を下げる薬を使います。
b) バルーンタンポナーデ法
静脈瘤破裂により出血した場合の一時的緊急止血に用いる。鼻からバルーン(風船)のついたチューブを挿入し、胃と食道でバルーンをふくらまして圧迫止血を行います。
c) 内視鏡的硬化療法
内視鏡下で静脈瘤に細い針を刺し、血流を固める硬化剤を注入します。
d) 内視鏡的静脈瘤結紮術
内視鏡の先端にゴムバンドを装着し、静脈瘤を機械的に縛ることにより壊死脱落させます。
e) 経皮経肝的塞栓術(PTO)
レントゲン透視下で、食道静脈瘤の原因となる血液の流入路を金属製コイルや硬化剤でつめて閉鎖します。
f) 経皮的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)
レントゲン透視下で、門脈と静脈の間に新しく血液の流れ路を作ることにより門脈圧を下げます。
g) 外科手術
食道胃の血管をしばり、食道を一度ほとんど切り離したのち吻合し、さらに脾臓を摘出する食道離断術があります。