1.定義
胃食道逆流症(gastro-esoph-ageal reflux disease;GERD)とは、胃の酸が食道に逆流することにより、食道粘膜を傷つけたり胸やけを引き起こす病気です。
2.症状
食道に酸性の胃液の逆流が頻回に起こると、食道粘膜がダメージを受け、びらん(ただれ)や潰瘍(食道炎)ができて、胸やけや呑酸(口の中に酸っぱい液や苦い液がこみ上げること)、みぞおちの不快な感じが起きます。
3.原因
胃酸の食道への逆流は、男性では中年以降、女性は高齢者(特に腰の曲がった人)に多くみられます。食物を大量に食べた後や、高脂肪食や甘いものを食べた後に起こりやすくなります。
中高年になると増えてくる食道裂孔ヘルニアも逆流の原因となります。裂孔ヘルニアとは、食道と胃のつなぎ目である噴門がゆるくなった状態で、肥満とも大きな関係があります。
4.診断
診断には内視鏡検査が一番適しています。食道の胃に近い部分が最も酸にさらされやすいため、食道炎の重要な所見である粘膜のびらん・潰瘍は主に食道下部に起こり、特に食道裂孔ヘルニアのある人に多くみられます。自覚症状が強いのに、内視鏡ではびらん・潰瘍がみられないこともありますが、このような場合も食道に酸が逆流して症状が起こるため、食道炎と同じに扱われ、胃食道逆流症(あるいは逆流症)と呼ばれます。
5. 治療
治療には、内科的治療と外科的治療があります。
1) 内科的治療
胃酸の分泌をおさえる薬として、H2受容体拮抗薬(H2RA)と、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の2種類があります。いずれの薬も副作用は少なく、長期間にわたり服薬する事ができます。自覚症状が改善していても、食道粘膜のびらん・潰瘍が十分に治らないこともあるので、年に1回ほど内視鏡検査を受け、経過を観察するほうが良いでしょう。
そのほかに、胃液を小腸に送り込むために、胃腸の動きを活発にする消化管運動賦活薬がありますが、酸分泌抑制薬と組み合わせて使用するのが一般的です。
2)外科的治療
薬物治療を長期に続けても好転しない場合には、手術的な治療を考慮します。食道裂孔ヘルニアが逆流の大きな原因になっている場合が多いので、逆流しないように裂孔ヘルニアの修復と緩んだ噴門を締め直す噴門形成術が行われます。
最近では、腹腔鏡手術(おなかに小さな穴をいくつか開けて、そこから患部を見る内視鏡や手術用具を入れて手術をする方法)が広く行われるようになりました。
3)生活習慣の工夫
胃食道逆流症の治療には、生活習慣への注意もあわせて必要です。肥満はお腹の圧力を上昇させ、胃から食道への逆流をおこしやすくします。
食事の際は、食べ過ぎないこと、脂っこい物を過剰にとらないことを心がけましょう。また、食べてから3時間くらいは横にならないことです。
就寝時は、座布団を2~3枚、敷き布団の下に入れて上半身を高めにすると胃液の食道への逆流が防げます。