マーズレンS配合顆粒
アズロキサ顆粒2.5%
当社開発品であるマーズレン・アズロキサに代表されるアズレン骨格とは、5員環と7員環が縮環した独特な化合物である。
アズレンはナフタレンの異性体ですが、白色のナフタレンに対して、鮮やかな美しい青色を呈することが知られている。
アズレンの代表化合物のグアイアズレンは、カモミールやユーカリの精油成分として古くから知られており、民間薬として使われ、独特の青色を呈する。
また、日本を含む世界各地で食用されている「ルリハツタケ(瑠璃初茸)」学名:Lactarius subindigo Verbeken et E. Horak(ベニタケ科 チチタケ属)にもアズレンの誘導体が含まれている。
寿製薬株式会社は世界で最も大量にアズレン化合物を製造し、かつ、精力的に研究している企業の一つである。
グアイアズレン
カモミール
ルリハツタケ
アズレンの研究は、故 野副 鐵男教授※1(元 台北帝国大学教授、元 東北大学教授、文化勲章受章、日本学士院会員、仙台市名誉市民)を濫觴とする日本発の研究で、我が国の研究者が世界をリードしている分野である。
※1 | 野副 鐵男教授 「ひとすじの道 ―追憶・野副鐵男先生―」1997年野副鐵男先生追悼事業会より引用 |
特に野副教授の研究室のご出身で、当社が長年に亘り定期的に技術指導を仰いでいた故 安並 正文教授(元 日本大学教授)、故 高瀬 嘉平教授(元 東北大学教授)により見出されたトロポロン類から容易に合成される「オキサアズラノン(2H-シクロヘプタ[b]フラン-2-オン)類」と「エナミン類」とを反応させて特徴的な「8+2型の環化付加体」を経て、脱炭酸反応、次に脱アミン反応を行う一連の高効率的なアズレンの合成方法は、「高瀬-安並のアズレン合成法※2」と称されており、多様なアズレン誘導体が合成できるので、医薬品※3や液晶分野の成長を著しく牽引している。
※2 | 有機合成化学協会誌 1981年39巻12号p.1172-1182 |
※3 | Synthesis and Anti-ulcer Activities of Sodium Alkylazulene Sulfonates. Chem Pharm Bull (Tokyo). 1988 Feb;36(2):641-7. doi: 10.1248/cpb.36.641. |
2009年 安並 正文教授講演会(当社)
また1970年にノーベル化学賞の候補者になっていた野副教授(ノーベル賞委員会公表)は東北大学教授をご退官後、当社にお越しになられ、「(ご自身の)ノーベル賞受賞のためにはアズレンの社会的な応用実績が重要である。そのためにアズレンの医薬品分野での大いなる発展に期待している。」とのお言葉を当社の社長がいただいている。
なおアズレン関連論文は1990年代が毎年100件以下であるのに対して、2010年以降は毎年200件程度の論文が投稿されており、近年、増加傾向にある。
アズロキサ(胃潰瘍治療剤)に含まれている「エグアレン ナトリウム」は、世界で初めて寿製薬株式会社にて合成されたアズレン誘導体です。
(JP-01049259,JP-05410816,JP-05878510,JP-05465867,JP-11147822,JP-2003-160484,WO-2006043336,EP-00147915)
非ベンゼン系芳香族化合物(Non-benzenoid Aromatic Compounds)について
有機化学では「亀の甲」である六員環の「ベンゼン」を直ぐに思いつくが、非ベンゼン系芳香族化合物には、「アズレン」や「トロポロン(不飽和七員環化合物)」などが属している。
初めての非ベンゼン系芳香族化合物の研究は、当時の台北帝国大学(現 国立台湾大学)の野副教授らのグループが、1936年の台湾ヒノキ(Chamaecyparis taiwanensis)の精油成分より、世界の化学史上の偉業として評されている融点51~52℃、分子式C10H12O2の「ヒノキチオール」の単離にその端緒を発する。
「ヒノキチオール」はベンゼン系とは異なる新規な芳香族化合物であった。野副教授らのグループは、天然物の「ヒノキチオール」の研究をさらに深化させ、「トロポロン」の各種誘導体の研究、また後に「アズレン」誘導体の研究まで発展させることになる。
この「ヒノキチオール」の発見では、同時期の戦時下にスウェーデンのH.Erdtman教授らのグループも行っていた。1950年のロンドンでの国際会議でH.Erdtman教授は、「ヒノキチオール」の第1の発見者は野副教授であることを告げると、野副教授らは一躍世界の第一線に立つこととなる。また、この物語は後に1955年の国語の教科書にも掲載され、戦後の荒廃の中で人々を大いに勇気づけるものであった。
なお、野副教授の一連の偉業により、東北大学理学部研究科の構内には、七角形の石造の「トロポノイド化学顕彰之碑」が建立されている。さらに「基礎有機化学会」では、顕著な業績を上げた若手研究者に「野副記念奨励賞」を与えている。
Hinokitiol(ヒノキチオール) |