1.胆管がんとは
胆汁の通り道である胆管に発生する悪性腫瘍で胆管上皮に発生します。胆管は肝臓の中にある肝内胆管と肝臓の外にある肝外胆管に分けられますが、一般に肝外胆管に発生した悪性腫瘍を胆管がんと呼んでいます。また、肝外胆管はさらに肝臓の入り口の肝門部、肝門部から胆嚢までの上部、胆嚢から膵臓までの中部、膵臓から十二指腸乳頭部までの下部の3つに分けられ、そこに発生する悪性腫瘍をそれぞれ肝門部胆管がん、上部胆管がん、中部胆管がん、下部胆管がんといいます。(図1)したがって、肝門部胆管がんや上部胆管がんは肝臓や胆嚢、中部胆管がんは胆嚢や膵臓あるいは十二指腸,下部胆管がんは膵臓や十二指腸に浸潤することがあります。胆管壁は薄いため、がんが深部へ容易に浸潤しやすく、多くの場合、進行した状態で発見されます。
発生頻度はそれほど多くはありませんが、胆嚢がんと合わせた胆道がんの死亡数は2005年で第6位であり年々増加傾向にあります。男性が女性の約2倍で、男女とも50~60歳代に多くみられます。
2.症状
発生部位により多少異なりますが、初期には症状はなく、がんが進行して胆管が塞がれると胆汁の流れが滞り、胆汁中の成分の一つであるビリルビンが血液や尿に混じり、皮膚や目の白い部分などが黄色みを帯びたり、尿の色が紅茶のように濃くなったり、皮膚が痒くなったりなど、いわゆる黄疸の症状がでてきます。胆汁が十二指腸へ流れないため、便の中のビリルビンが減り便の色が白っぽくなることもあります。また、うっ滞した胆汁に腸内細菌などの細菌感染が起こると胆管炎を生じ、悪寒(寒気)や発熱などを認めることもあります。
3.診断
血液検査と画像検査で行われます。血液検査には、ビリルビンや肝臓・胆道系の酵素(AST、ALT、ALP、γ-GTPなど)、腫瘍マーカー(CA19-9など)などがあります。画像検査には腹部超音波検査(エコー検査)、CT検査(コンピュータ断層撮影)、MRI検査(磁気共鳴撮影)などがあり、がんの部位や周囲への広がりの程度を診断します。また、胆管を直接造影するERCP検査(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やPTC検査(経皮経肝的胆管造影)もあり、これらを利用して胆管内へ細いチューブを挿入し、うっ滞した胆汁を体外や十二指腸内に排出させ黄疸を軽減させるドレナージ処置を行うこともあります。この際、胆汁中のがん細胞の有無を調べることも可能です。
4.治療
外科的切除が基本で唯一の根治的治療法です。がんの部位に応じた手術方法が選択されますが、進行例が多いことから一般に中・下部胆管がんでは胆管、胆嚢、膵頭部、十二指腸を切除する膵頭十二指腸切除が適応となり、肝門部・上部胆管がんでは胆管、胆嚢、肝臓の一部を切除する肝外胆管切除と肝切除が適応となります。がんが肝門部・上・中・下部の胆管へ及ぶ場合には肝切除と膵頭十二指腸切除を同時に行うこともあります。さらに胆管周囲の血管(肝動脈や門脈)にがんが及んでいる場合には、これら血管も切除し再建することもあります。
がんが胆管周囲や肝臓内へ広く深く及んでいる場合には外科的切除が不能であり、胆管の狭窄部位に応じてドレナージ処置を行ったり、体外または内視鏡によるアプローチにより細いチューブや金属性の器具を胆管内に留置して胆汁の流れを確保したりして(胆管ステント)、抗がん薬を用いた化学療法や体外あるいは胆管内からの放射線療法などを行います。
胆管がんは上部の胆管にできるほど予後が不良で、また進行例も多いため、切除例全体の5年生存率は低く20~30%程度です。