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痔疾

「痔」は古くから人間を悩ませてきた病気のひとつで、紀元前4000年のインドのヴェーダ聖典にも記載されています。日本人の成人の2人に1人は痔があるといわれ、私たちになじみ深い病気です。痔疾には痔核、裂肛、痔瘻の3大疾患があります。

1.痔核

1)痔核とは

痔核とは肛門や直腸下部の血液の流れが悪くなり、この付近の静脈がコブのようにはれた状態を指します。一般には「いぼ痔」と呼ばれています。
肛門に発生するのが外痔核、内側の直腸に発生するのが内痔核です。いずれも出血が主な症状ですが、外痔核は急激に発生することが多く、激しい痛みを伴います。内痔核は、腫脹すると肛門から脱出することがあります。通常は押し込むと直腸内に戻りますが、戻らないほど大きくなると(これを痔核嵌頓といいます。)激しい痛みが出ます。

2)痔核の治療法は

生活上の注意としては、①便通をよくする、②排便時にいきまない(残便感があっても5分程で排便を中止)、③長時間、座る仕事や車の運転をしている人は、休憩をとって足を動かす軽い運動をする、④過度の香辛料やアルコールを控える、⑤肛門部を冷やさないなど、血流障害を予防することが基本です。ひどくない痔は坐薬、軟膏、内服薬などで治療ができます。
ひどくなった痔は外科治療が必要ですが、冷凍療法、ゴム輪結紮術、硬化療法、痔核切除術などさまざまな方法がありますから、早目に外科や肛門科の専門医と相談しましょう。

2.裂肛

1)裂肛とは

排便時の過度のいきみが原因で肛門の上皮に裂傷が生じ、出血や疼痛をおこす病気が裂肛(切れ痔)です。慢性化すると深い潰瘍ができ肛門が狭くなって排便が困難になってしまいます。

2)裂肛の治療は

裂肛の患者さんは便秘傾向で硬い便のことが多いので、生活指導、食事療法とならんで緩下剤や肛門内に入れる座薬や軟膏の処方を行います。急性の裂肛はこのような保存的治療で大体治ります。慢性化して肛門が狭くなってしまった場合には、麻酔をかけてから肛門を拡張する方法があります。肛門を締める筋肉が過度に緊張している場合には、一部を切開して緊張を和らげる方法もあります。

3.痔瘻

1)痔瘻とは

肛門の周囲に痛みや腫れが少しあり、膿がじくじくと出続ける状態を痔瘻といいます。肛門の少し奥にある肛門腺に感染が起こり発症すると考えられています。

2)痔瘻の治療法は

痔瘻の治療の原則は外科治療です。原因となっている肛門腺を含めて膿の通り道となっている瘻管を処理することが必要です。しかし何本も瘻管があるような複雑な痔瘻に無理な手術を行うと、肛門を締める筋肉の収縮力が弱まってしまうことがありますので注意が必要です。経験を多く積んだ肛門外科専門医の診察をうけるようにしてください。
お尻を見せることは恥ずかしいと思う人は多いですが、何事も早期診断・治療が大切です。「たかが痔」と馬鹿にすると「尻に火」がつきます。