寿製薬株式会社

肝がん

1.肝がんとは

肝臓に発生するがんのことをいい、広く肝がんというと、肝臓から発生した原発性肝がんと、他の臓器に発生したがんが肝臓に転移してきた転移性肝がんとに分けられます。
原発性肝がんには、肝臓の肝細胞に由来する肝細胞がんと胆管上皮細胞に由来する胆管細胞がんがあり、わが国では前者が90%以上を占めています。また、ごくまれに両者が混在する場合もあり、混合型と呼ばれています。一般に肝がんというときは肝細胞がんをさす場合が多いようです。わが国での原発性肝がん死亡者は年間およそ3万人といわれ、男性のがん死因の第3位、女性では第5位を占めています。

2.原因

肝細胞がんは日本を含め、アジア・アフリカに多く、欧米には少ない傾向にあり、男女比は7:3で男性に多いとされています。病因としては、肝炎による慢性の肝障害(肝硬変、慢性肝炎など)から発生するため、C型肝炎(80%)、B型肝炎(15%)ウイルスの関与がほとんどを占め、稀にアルコール性、非アルコール性脂肪性の肝障害を背景とする場合もあります。

3.症状

肝臓は“沈黙の臓器”といわれるように、初期の段階では無症状のことが多く、かなり進行すると、易疲労感、黄疸、腹水、腹痛などの、いわゆる肝機能障害に類似した症状を呈します。また、稀に腫瘍破裂を来し、腹腔内に出血し、腹痛、貧血、ショック症状を呈することもあります。

4.診断

画像診断が中心で、その手段としての超音波検査、CT、MRなどによって、肝内に占拠性病変を確認し、その画像パターンからほぼ診断可能です。また血液中の腫瘍マーカーとして、αフェトプロテイン(AFP)が有名で、肝細胞がんの70%で上昇します。その他、PIVKA-IIというマーカーもあり、AFPと相補的といわれています。また最近では、先のAFPのL3分画が注目され、肝細胞がんではこの分画の割合が上昇することがいわれています。

5.治療

手術療法(肝切除)、局所療法(経皮的ラジオ波焼灼療法が中心で他に、エタノール注入療法、マイクロ波凝固療法)、肝動脈塞栓療法が有効な治療として存在します。中でも手術が最も根治性が高い治療法として認識されていますが、背景の肝障害の程度(肝機能)や、がんの大きさや数、位置によっては手術ができないことがあります(切除率はおよそ30%)。この場合は、局所療法や肝動脈塞栓療法が選択されます。
2007年に発表された、日本肝がん研究会の全国集計によれば、そのがんの進行度や背景肝の状況は異なるものの、その5年生存率は、肝切除が53.4%、局所療法が42.0%、肝動脈塞栓療法が22.6%と報告されています。また、近年、肝がんに対する肝移植治療が欧米を中心に発展し、わが国でも漸増してきています。基本的には、がんの進行度が低く、背景肝機能の不良な例が肝移植に適していると考えられています。